楽譜記号について。
曲を作ろうと思ってはじめてみて、メローディは頭の中では何とか出来ても、其のメロディーの記譜方法が解からなかったり、メロディーに、ギターやキーボード(ピアノ等も)などでバッキングをつけようと思っても、記譜方法やスケール・コードなどが解からないと言う事があります。
また、市販の楽譜をPCのDAWにステップ入力しようと思っても、“音符程度は解かるが、それ以外の記号がわからない”という事が有ります。
解からないと、間違ったバッキングをつけたり、間違った曲として入力・再生してしまいます。
と言う事で、取り合えず楽譜の記入方法から少し見てみましょう。
ト音記号とヘ音記号
図1
図1の上側が“ト音記号”で下側が“ヘ音記号”です。(上図は、高音部と低音部が1つにまとめられているピアノ用のものです。)
“5線紙”という言葉を聴いたことがありますか?。(楽譜用に5本の線が書かれているものです。)
図1のト音記号(上側)の書かれている所には、線が5本書かれていますね。
ですから、楽譜専用に印刷されている用紙を5線紙(又は、5線譜)と言い、10段〜30段位のものが市販されています。
ト音記号部(上図の上の段で基準が“ト”(ソ・G))
各線上は、下から順に、ミ、ソ、シ、レ、ファになっています。
線の間は、下から、ファ、ラ、ド、ミとなります。
ヘ音記号部(上図の下の段で基準が“へ”(ファ・F))
上図のヘ音記号の書かれている方の5線を見てください。
各線上は、下から順に、ソ、シ、レ、ファ、ラと言う音程になっています。
線の間は、下から、ラ、ド、ミ、ソと言う音程になります。
同じ5線なのに、なぜ音程が違ってくるのでしょう。また何でト音記号、へ音記号というのでしょうか?。
上図のト音記号、へ音記号等を音部記号(多分そうだと思います。私はそう呼んでいました。)と言い、5線の先頭に書かれた記号で、基準となる音程の場所を示しています。
ドレミファの記譜方法は、次のように言い換える事が出来ます。
ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド (イタリア式呼び方)
C D E F G A B C (イギリス式呼び方)
ハ ニ ホ ヘ ト イ ロ ハ (日本式呼び方)
現在は、ドレミ 又は CDE と言う事が殆どですが、ハニホという言い方は、古い言い方で、今でも記号などの名称に使われています。特にCDE表示のほうは、後で出てくる“コード(和音)”では重要な表記方法です。
上図のト音記号の渦巻きの中心(赤矢印)が、ソの音程の線を囲むように付けられています。つまり、ソの音程を示す記号で、現在なら、ソ音記号とでもいうべきでしょうが、昔は、“ソ”と言う呼び方ではなく、“ト”という呼び方だったので、“ト音記号”と名ずけられ現在でもそのまま使われています。
ト音記号は、第2線(5線の下から2番目)が“ト(ソ/G)”である事を示しているので、5線上では、第1線から、E(ミ)・F(ファ/第1間)・G(ソ/第2線)・A(ラ/第2間)・B(シ/第3線)・C(ド/第3間)・D(レ/第4線)・E(ミ/第4間)・F(ファ/第4線)となります。
ヘ音記号も同様に、頭(始り)の●が、へ(ファ、F)の音程である事を示しています。
5線上では、第1線から、G(ソ)・A(ラ)・B(シ)・C(ド)・D(レ)・E(ミ)・F(ファ)・G(ソ)・A(ラ)となります。
ここでは、ト音記号とヘ音記号しか記載しませんが、他にも、ハ音記号(楽器によって位置が変わります。)などもあります。
参考)
5線は、下から、第1線、第2線・・第5線、線と線の間は、下から第1間、第2間・・第4間、五線以外に音符を記入する場合は、補助線を記入しますが、5線下側に補助線が記入してある場合は、下に向かって下第1間、下第1線、下第2間、下第2線・・と言い、5線より上に補助線が記入される場合は、上に向かって、上第1間、上第1線、上第2間、上第2線・・と言います。
調号と拍子
図2
調号
1 2 3 4 5 6 7
図3
調号無しは、ハ長調とイ短調。
#は半音上げます。
♭は半音下げます。
先頭にある調号(無い場合も含む)は、次の調号が来るまで有効です。当然来ない場合も有り、其の場合は先頭の調号のまま終曲となります。
上図の様に、楽譜の先頭で指示されている調号は、それ以降に次の調号が出てくるまで、全ての小節に有効となります。最初の調号のみで、次の調号が出てこない場合もあります。出てこない方が多いでしょう。もし途中で調号が出てきた場合は、其処で調が変わるので、転調と言います。また小節間でのみ有効な記号は(#・♭など)は臨時記号(後述)といって、同じ#・♭でも有効範囲が違います。
調号による調(音階・スケール)の呼び方。
#の数 |
なし |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
名称 | ハ長調 イ短調 |
ト長調 ホ短調 |
ニ長調 ロ短調 |
イ短調 嬰へ短調 |
ホ短調 嬰ハ長調 |
ロ長調 嬰ト短調 |
嬰へ長調 嬰ニ短調 |
嬰ハ長調 嬰イ短調 |
♭の数 | なし | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
名称 | #と同 | ヘ長調 ニ短調 |
変ロ長調 ト短調 |
変ホ長調 ハ短調 |
変イ長調 ヘ短調 |
変ニ長調 変ロ短調 |
変ト長調 変ホ短調 |
変ハ長調 変イ短調 |
図4
この調の呼び方も、古い言い方が残っています。
嬰は“エイ”と呼びます。例えば、“嬰へ短調”なら“エイヘタンチョウ”となります。変ロ長調は“ヘンロチョウチョウ”です。
上記表から解かるように、#の場合は“嬰”で、♭の場合は“変”となります。
“嬰”とか“変”は、スケールのルートの音に、調号(#や♭)が来る場合に先頭に付きます。
(長調、短調、スケール、ルート等は後で説明)
拍子
図2で、調号の次に4/4と表示されていますが、これは拍子を表しています。
1小節の間に何拍の拍子を取るかと言う事で、分母は、音符の長さ(後で記載)を示し、分子は1小節に幾つあるかを表します。
4/4なら、1小節に、4分音符が4つ有るタイミングということです(4拍子)。
3/4なら、1小節に、4分音符が、3つ有るタイミングということです。(3拍子)
分母の4の4分音符は、4分音符に限らず、他の音符の場合も有ります。
6/8なども結構多いですね。この場合は、1小節に8分音符が、6つのタイミングであると言う事です。
分子は、3拍子系では、3、6が多く使われ、4拍子系では、2、4が多く使われています。
最近の楽曲では、5拍子などの変拍子系も使われます。
小節長さの指定は、楽譜の先頭に図8のように、2/4とか4/4様に指定してあります。
拍子記号に4/4などの分数が使われる事が多いのですが、4/4は“C”と書く場合があります。これは、昔、“3”と言う数は、とても安定の良いもの(完全なもの)とされ、3/4の代わりに○(丸)を書いたようです。4は3の次に良いものとされ、3ほどは良くないので、○(丸)の一部が欠けた“C”を当てたようです。
音の長さ
音符(発音する音の長さ)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
図5
1:全音符
2:2分音符(全音符の1/2の長さ)
3:付点2分音符(2分音符の1.5倍の長さ。上図2の2分音符と上図4の4分音符を足した長さ)
4:4分音符(2分音符の1/2。全音符の1/4の長さ)
5:付点4分音符(4分音符の1.5倍の長さ)
6:8分音符(4分音符の1/2)
7:付点8分音符(8分音符の1.5倍)
8:16分音符(8分音符の1/2)
9:付点16分音符(16分音符の1.5倍)
10:32分音符(16分音符の1/2)
11:付点32分音符(32分音符の1.5倍)
12:64分音符(32分音符の1/2)
全音符から見ると、2分音符は全音符を2つに分けた長さで、同様に4分音符は全音符を4つに分けた長さとなるので、“○分音符(○ぶおんぷ)”と言います。
なお、音符自体のパーツにも名前があります。
丸い部分は“符頭(タマ)”、縦の線は“符幹(ボウ)”、ヒゲは“符尾(ハタ)”といいます。()内は通称。
付点つき音符
付点とは、上図の3、5、7、11の様に、音符の直ぐ右側に付いている“.”の事です。
図6
付点つき音符は、例えば、上図の上側のように考えます。
上図の上側は、付点4分音符の例ですが、“.”(付点)は、〔付点前の音符〕+〔付点前の音符の1/2〕の様に、付点の付いている音符は、付いていない音符の1.5倍の長さになります。上図上側の例では、4分音符+8分音符の長さである事を示しています。従って、演奏上は上図矢印の右のようにタイで繋いで表示しても同様です。
上図下側のように、付点が2つ付いてる場合があります。この場合は〔付点の付く前の音符〕+〔付点前の音符の1/2の長さ〕+〔(付点前の音符の1/2の長さ)の1/2〕となります。
タイ
“⌒”音符の向きや付ける位置によって、上向きと下向きがあり、同音程を繋ぐ場合に使います。
図6矢印の右の音符の下に、横括弧のような物がありますが、これは、“タイ”といって、最初の音符の長さは、最初の音符とタイに続く音符の長さの分を維持しなさいと言う事です。つまり、付点4分音符は、矢印右のような表記も出来ます。例えば、1小節が4/4の場合、4分音符を4つ分しか入れることは出来ませんが、もし、最後の音を、付点4分音符としたい場合は、8分音符分余って入れることは出来ません。其処で、次の小節に8分音符を書き、4分音符と次の小節の8分音符をタイでつなぎます。こうすると、小節を跨って、付点4分音符を入れる事が出来ます。
また、リズムを明示的に表示したい場合など(音符を明示したい)にも使用します。
スラー
“⌒”。タイは同じ音程を接ぐ場合に使用しますが、違う音程をつなぐ場合は、スラーとなります。記号はタイと同じです。スラーはスラーで接がれた音符を“滑らかに発音しなさい”と言う事です。スラーもタイ同様に、上向きと下向きが有ります。
休符(発音しないで休む場所と休む長さ)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
図7
音符は、指定した長さ分発音しますが、休符は指定した分の発音しません。
小節は、和音など同一発音タイミングのものは1つと数えて、音符と休符の長さの合計が小節指定の長さになるようにします。
休符の場合のタイの使用方法は、音符の場合と同様です。
休符は発音しないので、どうでも良いのではと思いませんか?。ですが、この休符は重要な物です。
図8
例えば、上図(2/4拍子)では、1小節に、4分音符が2つ、8分音符なら4つ入りますが、8分音符が、3つ、B(シ)A(ラ)A(ラ)と並んでいたとします。
この場合は、2/4なので、1小節に4分音符なら2つ、8分音符なら4つ有るべきですが、上図では8分音符が1つ足りませんので、8分音符1つ分の休みを何処に入れたら良いか解かりませんね。
図9 1 2
図9の1又は2の様に、図8の8分音符1個分休む場所が特定できませんね。人によっては、1番目と2番目の音符の間や2番目と3番目の音符の間に入れるかもしれません。図9の1の心算で楽譜を書いて、休符を忘れると図9の2の様に取られてしまう可能性が大きいですね。
この様に、小節内で音符の数が少ない場合(小節内の音符の長さの合計が小節の長さより短い)は必ず休むタイミングで休符を入れます。
もし休符が無かったら、作曲者の意図とは別な曲になってしまうでしょう。また演奏者が変わるたび違う曲になるでしょうね。
この様に休符はとても大事な物です。
必ず
連符
図10
上図の“=”の右側の音符を左の音符と数字で示す等分した長さで発音します。実際には下図11のように記譜します。
図11
上図は、16分の3連符です。これは8分音符1つ分になります。
8分音符1個分の長さを3等分した長さのものを3回発音します。下図12の右の様にカギ括弧や円弧に分割数を添付して示す場合も有ります。
図12
連符のどこかに、休符が入る場合は上記のようにします。(この場合、音符と休符は必ず同等分とします。)
図13
上図は、5連符の場合です。(16分音符1個分の長さを、5等分した長さで5個発音します。)
連休符
図14
実際の連休符の記譜方法は、音符と同様です。
個別の音に対する一時的な記号(通常各音符の上側に付加されています。)
1 2 3 4
図15
1:フェルマータ 音を伸ばす(拍は停止)
2:tenuto(テヌート) 音を保持する
3:staccato(スタッカート) 1つ1つの音を分離して歯切れ良く。
(普通は、1/2くらいの長さにするが、時により1/4〜3/4位の幅がある。)
4:accento(アッチェント・アクセント) アクセント・強調する
臨時調号
1 2 3
図16
臨時記号は、指定のある同一小節内のみで有効で、他の小節には影響しません。もし他の小節で指定したい場合は、其の小節で指定しなおします。
同一小節内でのみ有効なので、次の小節は自動的にナチュラル(図16の2)されているものとなります。楽譜によっては、次の小節の該当音がナチュラルされていることを明示するために、其の音にナチュラルが添付されている場合があります。
1:#(シャープ) #の付いた音程を半音あげる。(同一小節内で有効)
2:ナチュラル #や♭が付いている場合に、其の音程を元に戻す。ナチュラル以降は、#やフラットが付かない状態になる。)
3:♭(フラット) ♭の付いた音程を半音下げる。(同一小節内で有効)
其の他にも、“x”(ダブル#。正式には、doppio diesis ドッピオ・ディェージス)が使われる事もあります。
この場合は、ダブル#なので、半音2つ分上げます。
“x”のダブルシャープとは逆に、半音2つ分下げるには、“♭♭”のように記入します。ダブルフラット(正式にはdoppio bemolleドッピオ・ベモーレ)といいます。
区切り線
1 2 3 4 5
図17
1:縦線。小節の区切り(1の縦1本線)
2:複縦線。フレーズなどの一区切りの立て2本線
3:リピート(反復)最初に戻る
4:リピート(反復)後ろから、ここまで戻る。
5:終止線。曲の終わりに付ける。
リピート記号(3、4)について。
3だけでしたら最初に戻りますが、例えば、4、3の順番に書かれている場合は、4と3の間を2回繰り返す。
このリピート記号と他の記号を組み合わせると、複雑な繰り返しを設定する事が出来ます。
演奏箇所の指定
1 2 3 4 5 6
図18
1:シミレ。前の小節と同じ。複数の小節にわたる場合は、小節数が併記してある場合があります。
2:セーニョ。ダル・セーニョでこのセーニョに戻る。
3:ヴィーデ/コーダ。D. Cか D. Sのあとでコーダに飛ぶ。
4:ダ・カーポ。先頭に戻る。
5:ダル・セーニョ。セーニョに戻る。
6:トゥ・コーダ。D. C.か D. S.のあとでTo Codaからコーダに飛ぶ。
繰り返し順番記号
1 2 3
図19
楽譜によっては、1、2、3‥や、A、B、C、‥等のように、上記の演奏箇所指定の他にも、演奏順を記載してある場合も有ります。
1:繰り返しの場合に、1番目に演奏する。
2:繰り返しの場合に、1番目を演奏した後は、2回目の繰り返しのときに、1番目を飛ばして、この2番目を演奏する。
3:繰り返しの場合に、1と2番目を演奏済みの場合は、1と2を飛ばして3を演奏する。
オクターブ記号
1 2 3 4
図20
1:8va alta(オッターヴァ アルタ)1オクターブ上を演奏する。ここから始まります。縦線が無い場合も有ります。
2:8va alta(オッターヴァ アルタ)1オクターブ上を演奏を、ここで終了します。
3:8vb bassa(オッターヴァ バッサ)1オクターブ下を演奏する。ここが始まりとなります。縦線が無い場合も有ります。
4:8vb bassa(オッターヴァ バッサ)1オクターブ演奏を、ここで終了します。
上下を決める、8 va vb 以外にも、隣の横線の位置にも注意して下さい。(横線の位置で上下が解からない場合も有ります。)
2オクターブ上下を演奏する場合は、下記を使います。使い方は、8vaと同様です。記号は、8vaの代わりに、15ma(2オクターブ上)下の場合は15mbを使用します。
15ma altaクィンディチェジマ アルタ(2オクターブ上を演奏)
15mb bassaクィンディチェジマ バッサ(2オクターブ下を演奏)
演奏の大きさを指定する記号
fff フォルテッシシモ(極非常に強く)
ff フォルテシモ(非常に強く)
f フォルテ(強く)
mf メゾフォルテ(少し強く)
mp メゾピアノ(やや弱く)
p ピアノ(弱く)
pp ピアニッシモ(非常に弱く)
ppp ピアニッシシモ(極非常に弱く)
上記のほかにも、スフォルツァンド、フォルツァンドなど他にもありますが、ここでは省略。
上記以外にも、その他トリルやターンなど楽譜には色々な記号や書き込みが大変多く有りますが、残りは省略。
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